死刑でいいです

死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人

死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人

2007年に判決が下され、今年の夏に死刑が執行された大阪の姉妹同時殺人事件の犯人・山路悠紀夫の生涯を追ったルポ本。書題は公判当時の本人自身の発言であり、その自暴自棄ととれる言葉のルーツを詳細に辿っている中身は、一般的な目でいっても非常に「しんどい」。生まれの不幸、家庭の不幸、環境の不幸。三拍子といえるほど不運が重なっている。アスペルガー症候群ないしは人格障害と逮捕後に診断されたパーソナリティの問題、両親ともに心理的問題を抱えて経済的にもほとんど瓦解していた家の問題、学校でもなじめず知人から紹介される勤めもパチンコ店や更によくない事にゴト師集団だったという周辺の問題。あまりにあまりである。だからといってまったく関係のなかった姉妹を無惨極まる襲い方で殺した事への弁護には全然つながらないのだけど、そこまで本人が社会から突き放されたと感じる前にせめてもう少しなんとかならなかったのかと自然と考えてしまう。これまでの彼に関する報道からくる快楽殺人犯というレッテルがきれいさっぱり剥がされる一冊でした。今はただ、できるだけ多くの人が考えつづける事だけが死んだ人たちに対してのはなむけ。