PERSONA - trinity soul - #26(終)

「浮上する未来」:ここにきてまだ諒には秘密があったという仕込み、その深さにかなり意表を突かれた。アバン(つづくOPはノンクレジットver.が流れた。これはかなり演出として新しい!)でのはねられた愛犬の死で初めてペルソナが出現したエピソードがまた凄い密度のキャラ描写だったよ。一番仲が良かった映子の前ですら泣けない長男気質と、抑えても出てしまった運転手への恨みという合わせ具合に胸が軽く締め付けられた。愛と憎しみが同根であり、その激しさにおいて同質だからこそ、小松原を手に掛けた時の諒には公務や義憤などなかったと理解できる。その情動を名づけるとすれば、エゴとしか指しようがない。ゆえに諒は、父親への憎悪を直視できなかったアヤネと同じく人のエゴを解消して新たな世界をつくりだす方向へと行ってしまったと。はあ〜……… 諒がこっこっまっっで…いっぱいいっぱいだったとは。人殺しが警察署長やってるんだからそれはストレスたまるわ。さてひるがえって主人公の慎はというと、非常に男らしさが増しておりちょっち萌えた。すなわち、顔のないゲームの主人公キャラからエゴを昇華させて世界を救う勲しの英雄へと成長したってこつですたい。結局、戦局を決した彼の決意は、つきつめればエゴの産物なんだと思う。もしかしたら諒たちの目的である、誰もが無気力だけど穏やかな世界の方が人は幸せなのかもしれない。けれど自分は、衝突しぱなしでもがきつづける関係の中にこそ真実と可能性はあると思うという意思表示、それがあの雄たけびと猛々しい表情だったと。自分のエゴを引き受けなければ、愛する他人の行きすぎを正すこともできないというそのメッセージが説教くさくないことにもう感じいることしきり。だって慎が諒に「今まで守ってくれてありがとう。だけどもうやめてくれ」なんて最終話で言うとは思わないじゃないですか!!!! ああ痛い。でもなんともいえず癒される。こんな余韻の最終回は今までなかったかもしれない。シリーズ初回の期待がまったく裏切られないすばらしい作品でした。作画が繊細なデザインのために固いことが多かったのは残念ですが、それはまあ不可抗力の範囲で、あともうひとつ残念だったのはペルソナバトルで何が起こっていたのか分からなかったことだけど、これはキャラ描写サイドの基調であった“身近な存在でもその心の動きを追える部分はごくわずか”に足並みを揃えてあったのだと無理繰り気味に納得するよ! …あとひとつ、エピローグ部で先に上京しているらしきめぐみ、一浪で入学した慎、寮生活を続けながらもバイト中(高校生になったっけか)の洵、バイトから店長に格上げされたらしき拓朗と、リアルな感じで進路がバラけていたのが妙にさびしさもあって、それがいい感じのスパイスになってました。松本淳監督やシリーズ構成のむとうやすゆき氏はじめ、スタッフの方々には感謝したいです。半年間ダレることもなく楽しませていただきました。