休日は両親の老いを直視するのがしんどいです。じわじわ疲労がたまっていく。
ダゲレオタイプの女('16 フランス・ベルギー・日本/監督:黒沢清)
おそらく主人公は移民二世ぐらいの設定なのだが、そういった社会背景をあまり描かかなかったことが吉とでたか凶とでたかは非常に微妙。ただ、比較的に善良な人間がグラデーションを描いて倫理にもとり、その結果として犯罪の当事者になってしまう。そこに不自然さはなかったので、やはり正解だったのかもしれない。監督の国内作とくらべてスーパーナチュラル・ホラーとしての怖さがあまり出ていないのは、ヨーロッパ人の風貌のためか、地理が生む湿度の違いのせいか。とにかく、恋愛とは絶対的に一方通行の錯覚ではないかという疑念がこだまするラストシーンが怖ろしくて切なかった。
沈黙 サイレンス('16 アメリカ/監督:マーティン・スコセッシ)
禁制時代のキリスト教伝道師たちの内面にはおそらくは布教の熱意以外にもそりゃもう色々なレイヤーが多層していたと思うが、ここではそれらはまったく描かれない。そして取り締まる侍たちの表情や物言いはえらく現代日本のお役人やサラリーマンの移し身のように描かれる。つまりここでは、キリストの教えも弾圧の中身も、等しく『寓話』の手段として見るべきではないか、と不遜かもしれないが非キリスト教徒の自分は思った。眼前に在る人々の苦悶と教義とを天秤にかけ、その結果うまれた偲びがたい矛盾とともに、なお信仰を持ち続けること。この映画の真髄は静かで表面上は美しささえ漂わす心の地獄を描いた後半十数分にあるなと感じた。…しかしなぜスコセッシはこんな瑕疵のない日本人論をつくれたの?
乞食稼業
- 作者: 唐十郎
- 出版社/メーカー: 冬樹社
- 発売日: 1979/04
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