2023年2月に観た映画

かがみの孤城 ('23 監督:原 恵一)
「カラフル」以前のIP作品で発揮されていたドラマカタルシスのための演出と、以降の現実と劇中人物の情感とがリニアに繋がるための実写的な間接表現とのバランスが見事で、またテーマ性からくるシビアさと画面の総合印象が招くエンタテインメントとが齟齬なく並立。自分としては「百日紅」のような地味さを恐れない作品もまた観たいが、より多くの観客に喜ばれるのはこちらだなとも思う。いずれにせよ原監督の映画がヒットするのは単純に喜ばしい。

霊的ボリシェヴィキ ('18 監督:高橋 洋)

タイトルコールでの合唱だけでもう75点。廃工場の雰囲気がなかなか不気味だったし、(ヤバいとこ来ちゃったかも)と徐々に募る焦りを表情などで示す段階の踏み方、よく知るはずの相手が少しずつ入れ替わるように変貌していくなど、集団主義の気持ち悪さをホラーで表現した実験的映画と受け取るべきか。とにかく題名の不審さが好きだわ。

ムタフカズ -MUTAFUKAZ- ('18 フランス・日本/監督:ギョーム・“RUN”・ルナール、西見祥示郎)

マフィアが牛耳る街(リアルに荒れていて、コミカルながらも容赦なく猥雑に汚く描かれる)での、寄る辺ない若者たちのバイオレンスでハチャメチャなひとときの冒険。わりとセオリーからは無軌道な展開をするので、こういう趣向は日本スタッフだけだと出てこないなとかなり新鮮。主人公の友達が憎めないながらもほんとに役に立たないしょーもない役回りというかキャラクターなのは、デフォルメが強いデザインだからこそだなと。吹き替えキャストの草彅剛、柄本時生満島真之介という布陣もいまひとつなんで?感が勝って逆にいい。

ジョンイ ('23 韓国/監督:ヨン・サホ)
水没した未来の都市というサイバーな舞台で、伝説的兵士として死後もコピーされて軍隊に搾取される母の人格を任務として目の当たりにしつづける女性研究者を主人公に、人間の尊厳が問われる。期待していたより大暴れシーンが少なかったというか勝手にもっと大きなスケールを期待していたが、陰鬱に何度も移動時間が描写される空中鉄道など印象に残るデザインやアイデアは複数あった。