2019年5月に観た映画まとめ

ザ・バニシング -消失- (’88 オランダ・フランス/監督:ジョルジュ・シュルイツアー)

 日本では劇場未公開だった作品がどういう経緯でかロードショー上映。80年代後半のドイツ郊外の風景の空気感やフィルムそれ自体の質感がレトロまで行かないほどの適度なノスタルジックさ。父に連れられたドライブの記憶が揺り動かされる。…というのはさておき、自己顕示型重大犯罪の心理を現実にさきがけて描ききっているあたり確かに恐るべき作品だと思った。ラストシーンが単なる戦慄に留まらず、加害者の精神にふしぎに接近してしまった(深淵を覗き込んでしまった)被害者の自嘲心に同調させてくる独特の味わい。

 

蒼穹のファフナー THE BEYOND ('19/監督:能戸 隆)

3話分の先行上映という形での興行なので、オープニングアニメとエンディングアニメがその仕様のままだったのは単に工夫をつける手間が取れなかったのか、意図的なものだったかはよく分からない。本編のボリュームと各話の趣向のバラエティの幅の二点においては満足度は高い。シリーズのファンとして初日の初回に観られたことはいい思い出になった。

 

バースデー・ワンダーランド ('19/監督:原 恵一)

宣伝ポスターのイメージよりも活劇要素が多く、キービジュアルは主人公の少女と若い叔母とが吊り橋をオープンカーで疾走するシーンから着想するべきだったと思った。くすりと笑えるコメディシーンも多く、配給側自身が推しだしポイントを押さえきれていなかったきらいがある。個人的には、シビアさを秘めたテーマだからこそのもっと微妙な屈折度で演出を付けてくれても良かったと感じた。キャラクターデザインはとても好き。

 

スターチャンネルで視たもの>

 

ベイビー・ドライバー ('17 アメリカ/監督:エドガー・ライト)

音楽・モータリゼーションアウトサイダー。古き良きアメリカ映画へのオマージュを題材に現代的な視点で構築しなおして爆竹で空に吹っ飛ばしたような快作。マッチョでもなくナイーブだけでもない主演のアンセル・エルゴートの持つ雰囲気がベスト配役すぎる。