2019年6月に読んだ本まとめ

湖 

湖

 

 前半は(ああ、世界のありふれた残酷さを淡々と描き出す系か…チョイス間違えたな)と読み進めていたが、折り返したあたりからテーマが研ぎ澄まされつつ現れてくる。主人公の少年が村落から都市へと移入すると同時に社会への視点が現代化していくが、相対化して達観というわけでもなく、ただ落ち込み絶望するでもなく、決して解け切れない謎こそが現実というものだと少年が肌身で感じ取ることで物語は終幕する。こういうアイデアの奇抜さが売りでない小説こそずっと記憶に残る気がした。