機動戦士ガンダムUC('10/監督:古橋一浩)

ひさしぶりに、満員のハコで映画観ましたわー。それにしても以降の巻ははたして映画館上映はあるのでしょうか。まああったらあったで遠征組の自分は困るわけだけどね。
…で、一時間という短い尺ながら、宇宙空間における三次元の動きを人物、メカ双方ともに満喫できるサービス大盛り仕様。原作者の福井晴敏氏はたしかガンダム小説をてがける時はトミノフォロワーになりきる姿勢を明らかにしてた人だと思うけど、当然アニメ版も宇宙世紀サーガの正道をいく慣行として、キャラ解釈や紛争演出に富野監督独特の手触りを踏襲している。が、私は観ているうちにひとつ決定的に富野作品とは違う点を見つけた。それは、主要キャラクターに欺瞞の影をまとわせていないこと。たとえば主人公バナージが戦いに自ら踏み込むその動機として「(オードリー・バーンと名乗った少女に)必要だと言ってほしい」から。これは富野監督なら、滑稽で不純な性根として視聴者の感情移入を全面的には流れ込ませないように、演出上でどこかの弁を閉めていたところだろう。もう一つ同様な顕著さなのは、バナージが“『ラプラスの箱』の鍵”を渡されるその相手であるカーディアス・ビストの弁舌シーン。これらで、何がもっとも富野手法と具体的に違うかといえば、私は音楽の使い方が異なっていると思う。UCはとにかくイケイケドンドンなのである。売れなければ困る、という製作者の都合がかつてよりよく見えてしまう… のはうがちすぎかもしれないが、しかしバナージのこれからの行動理念の主幹が「オードリーに一人前の男としてみてほしい」として脚本が構成されている点にもまた、美少女攻略ゲームのメソッドがオーソドックスになった現代アニメの状況があらわれているように思えるんである。つまり、ガンダムUCのドラマとしての到達点は「貴婦人ゲットだぜ」。それさえ描ききればおそらく話はまとまってしまう。そんな手堅さにセカイ系に似た枠の狭さもまた感じたのでありました

…ごめん、二巻以降は比較論じゃない感想やります! ガンダムUC第一話ふつうに面白かったです。私は騎乗MS込みでマリーダが一番魅力的だと思いました。あとひとつ、演出の雰囲気が一番似ている既作ガンダムは、0083だと思います。