2019年3月に観た映画まとめ

グリーンブック ('18 アメリカ/監督:ピーター・ファレリー)

迫るクリスマスの雰囲気と男だけの侘しいドライブ旅行との落差が、そのまま社会における理念と現実を示している。依頼主のもっともセンシティブな部分をあえて言語化しないバランス感覚の鋭さ。ピアノ演奏シーンもすべてすばらしく、音楽映画の側面も持っている。

ゴッズ・オウン・カントリー ('17 イギリス/監督:フランシス・リー)

主役どちらもが飛びぬけた美男ではないところにリアリティを感じた。恋愛と生活を切り離すことなく、それでもある条件が合えば、そのとき神の恩寵は荒野に顕現する。厳しい現実を描きながらもそれを超える瞬間を導き出す力強い作品。主人公の祖母が泣き出すシーンは脇役である彼女の存在感をそれこそ必要最低限の描写で浮かび上げていて、演出のレベルを知らしめる。

ふたりの女王 メアリーとエリザベス ('18 イギリス/監督:ジョージー・ルーク)

それぞれに弱みとしがらみを持つ女王たちが終盤にようやく邂逅する。その赤い数え切れないベールの小屋は、彼女らを時空を跳び越えさせて、いつか女性の君主が男性に陰で組み敷かれることなく民に認められる未来を予感させる。フィクションの意味がそこに重点的にある。

ヴィクトリア女王 最期の秘密 ('17 イギリス/監督:フランシス・リー)

女王に気に入られた当時の植民国インドからの使用人。彼の欺瞞心をある程度は物語に残しつつ二人の友人としての交流が描かれるわけだが、それでも陰で屋根裏部屋で病死する弱き存在は登場しているわけで、単なるほのぼのになってないあたり結構好き。あと老いの描写に注力されている点。

マチルド、翼を広げ ('17 フランス/監督:ノエミ・ルボフスキー)

小学校高学年の少女が、ひとりで精神が不安定な母の面倒を見ながら孤独すれすれの暮らしを送るわけだが、ペットのふくろうが愛らしかったり、生活を彩る小物や服がシックポップだったりして暗い映画にはなってない。長じた娘が療養所で母とダンスするなにげないシーンは印象的で忘れられない。

<ネット配信で視たもの>

コララインとボタンの魔女 ('08 アメリカ/監督:ヘンリー・セリック)

パペットアニメーション。曇天の日のような薄暗い光線や、プロポーションをあえて少し歪ませたような人物デザインがなんだかとっても自分の肌に合うというか好み。異世界描写もくもの巣だらけの空間が多かったり、夜のシーンばかりだったりと、子ども向け=明るいという既成概念を、企画の時点で伸び伸びと破っている作品。