HAPPY END
ほんの少し先の未来。都内のとある高校で予算獲得のためにスタンドプレーが日ごろ目立つ校長の愛車が逆立ち状態にされるという事件が起こる。それにまつわる仲良しバンド仲間たちの小さなすれ違い。仲間の一人が恋心をいだく女子生徒のグループが、人種差別的な施策を撤回させるために校長を軟禁する更なる事件が起き、それらの軋轢が臨界点を迎えそうな時、別の仲間がたったひとりでとある決断を実行する。歩道橋のさりげない別れのラストシーン、肌に刺さるが爽やかな風がこちらがわにも伝わってくる。風は似ているようでいつも吹いてくる方向は違う。今日と同じ射し方をする陽はもしかするともう出会えないかもしれない。世界はつねに生まれ変わっている。現実で生徒たちが縛られている色んな流行から自由な装いで登校している生徒たちのファッションも新鮮だった。
八犬伝
見栄えのいい男たちが殺陣芝居を見せてくれる劇中劇パートと、世知辛いの家庭模様を浮かび上がらせる新劇風ドラマサイド。山田風太郎の異色作を忠実に映画化したといえる。あえて苦言を呈せば、晩年の馬琴を支えた息子の妻の“共犯者”的戯作への熱気をもっと表現してほしかった。が、中盤におかれた芝居小屋の奈落でさかさまに顔をのぞかせる鶴屋南北との、フィクション論の対立の構図が映像として傑出していたので原作ファンとしてはトータルで80点を出したい。