2021年5月に観た映画まとめ

どん底作家の人生に幸あれ!('19 イギリス、アメリカ/監督:アーマンド・イアヌッチ)

文豪ディケンズの自伝的要素の強い長編「デイヴィッド・コパーフィールド」を多人種構成のキャスティングで脚色。といって、インド系俳優が他の家庭成員が白人である主人公にあてられているエクスキューズはないので、観ている側としては画面の外の政治情況を意識しつつ引っかかりを処理し続けなければならないのだけど、様々な社会階層が交錯するドラマの後半になってようやく違和感は消え物語に没頭できた。未来の映画の姿を啓示してみせて、半分は達成されたといえる作品。それにしてもゴマすり小間使い役のベン・ウイショーは役幅が広い。ところどころで上品な美しさが漂いはしてたけれども。

 

JUNK HEAD ('21/監督:堀 貴秀)

一人で作り上げたSFストップモーションアニメ、と言われなければ分からない世界観の練り上げが確かに新人離れしている。しかし、どうも自分は主役の行動原理が分からなくて画面の中に入り込めなかった。相性が良くなかったなあ。

 

アンモナイトの目覚め ('20 イギリス・オーストラリア・アメリカ/監督:フランシス・リー)

どうも先行作「燃ゆる女の肖像」と設定が重なってしまい、こちらの印象がボヤけてしまう。キャスティングの力強さは勝っているのだからもったいないな…と勝手に惜しんでしまった。イギリスの海辺の片田舎が舞台なだけあって、社会階層の描き方は体温や匂いまで伝わってくるよう。風にさらされつづけたようなケイト・ウィンスレットのかさついた演技は実在感たっぷりで、浮世離れした感じに妖精めいたシアーシャ・ローナンとの組み合わせはまさに好対照。ラストの穏やかなあいまいさには救われるような気持ちになった。