燃える天使

燃える天使 (角川文庫)

燃える天使 (角川文庫)

文庫落ちする前の表題作であった『僕の恋、僕の傘』(マクガハン)の滑稽さと切実さの青春模様、関係が始まりきらずに終わる『愛の跡』(マッキャン)、ありふれた町の退廃がつかのま表面に出る瞬間を捉えた『猫女』(ダイベック)など、テーマは異なれどどれも“真実は断片的に浮かぶ情景からしか組み立てられない”という穏やかかつ揺るぎない視点が非常に柴田元幸セレクトだなあという印象。この人の訳ほど、会話の箇所から“人間の関係の現れにはほんとに国境なんてないんだなあ”と感じさせられる文体は他にない。