レンブラントの帽子

レンブラントの帽子 (1975年) (現代の世界文学)

レンブラントの帽子 (1975年) (現代の世界文学)

表題作は大学の講師同士が、帽子を表現した何気ない言葉を持ち主が揶揄と捉えたことから関係がこじれるという生活上の何気ないエピソード。ユーモアとやりきれなさという距離観の異なった二つの基調が同時に奏でられているマラマッド作品の特徴が端的に。ロシア語の言い回しで「引出しのために書く」という圧政時の表現者の鬱屈を表現したものがあるそうだが、そこから題名が決まったと思われる『引き出しの中の人間』、現代日本の引きこもりそのものな若者と父親のディスコミュニケーションを描いた『わが子に、殺される』等が印象に残った。