ヒトラーが死なずに枢軸国と連合国が戦い続けている
パラレルワールドが舞台と聞いていたけど、実際には仮想
歴史小説というより
マジックリアリズムの色合いが濃い。外世界の動きよりも主人公の意識の流れを描くことが主体になっているから。南部の田舎町で、NYで、ウィーンで、名もない港町で、歴史は夜動く。その折々のシーンの鮮やかさが印象に残る。
ヒトラーと主人公のポルノ小説家が“幻の女”を共有するア
イデアには、虚構に親しむ者に特有の観念論が篭っている気がして興味深い。そこにいないからこそ、彼女は確実に存在し続ける。その媒体となった人物を消滅させるほどに。