多重人格者 (こころライブラリー イラスト版)

図版多数、というかほとんどグラフィック主体なレイアウトで分かりやすく臨床心理の世界を解説する講談社のレーベル。イラストが教育漫画と萌え絵の中間ぐらいで、清潔感があってカワイイ。とても読みやすいのでシリーズの他の冊も読もうと思う。で、現在は解離性同一性障害と正式には呼称されている多重人格症のお話。突然に振る舞いや言動が豹変して周囲を戸惑わせ、社会生活を困難にするその症状はたとえば境界性パーソナリティ障害などとも似ているわけだけど、多重人格症の特異な点は人格交代の間の記憶が連続されないこと。それにより、自分の行動が制御できないわけだから、これは恐怖だよね。大人しい女の子が朝起きたらタンスの前に派手な下着が脱ぎ散らかしてあるわけですよ(という図版入ってる)。その原因は大半が幼少期のトラウマ。患者は圧倒的に女性が多く、欧米では近親者からの性虐待が主な原因として多いが、日本ではいわゆる空気を読みあう閉鎖的な社会環境からくるストレスが深く影響しているのが特徴。もし身近に多重人格症状で悩んでいる人がいたら素人の生兵法はやめてすみやかに専門家へと導きましょう、家族は自分が悪いとむやみに悩む必要はありません(人間関係とは双方向なものだから一方だけが絶対的に悪いというのは現実的な考え方でないしその時々の状況もあるから)などのアドバイスも入ってたりして、浅く広くといった感じの入門書。オススメ。