社会不安障害

社会不安障害―社交恐怖の病理を解く (ちくま新書)

社会不安障害―社交恐怖の病理を解く (ちくま新書)

アメリカで起こった、精神医学的な治療に前提的な懐疑を主張する運動を「ディジーズ・モンガリング」というそうで(p119)、精神神経科の医学博士である作者もその疑問自体を決して頭から否定してはいない。内科や外科などで違って、視覚で明確に診断できない精神科では、どうしても患者の自己申告に重きを置く形になるのはたしかに仕方がない事ではあるなとは感じる。この新書で紹介されている患者例は、いずれもきっかけはありふれてささいな日常生活でのつまずき。そういった悩みをこじらせていく経過が、治療薬処方後の様子と合わせて簡明に紹介されている。薬の副作用として楽天性が度を越してかえって将来への意欲を失ってしまったり、怒りの衝動を抑えられなくなった例(それぞれ服用量を減らす事で対応)なども率直に記す姿勢は誠実に感じた。