近代の特徴を人間中心主義と位置付けて、それに個人として対した作家たちの仕事を検証して再発見する試み。各章一人ずつ紹介されている中で、複数作読んだことがあるのは
夏目漱石(ちなみにこの人だけ反近代というテーマからあえて省かれているイレギュラー扱い)、
江戸川乱歩、
筒井康隆のみだったのでふつうに
近代文学史として読んだきらいもなきにしもあらず。文壇や世評の先入観を拝した著者の姿勢から読書好きとして太いに学ばせていただきました。人間の意志の尊さを描くよりも、精神の力の及ばない絶対的な“外側”(それは怪異だったり世界の不条理さだったり)と、それとの関わりを注視することで流行から一歩しりぞいた作家たちへの賛歌。戦中戦後で
アナーキーな作風の小説家といえば
太宰治や
坂口安吾が定番だけど、それをあえて外してあるのが本書のミソ。