神を見た犬

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

荒川洋治のエッセイ集「黙読の山」の中で推薦されてたのがきっかけで読んだけど、この光文社の古典新訳シリーズはたしかにいい企画っぽい。今年かなり売れたという「カラマーゾフの兄弟」、私も読んでみようかなあ。閑話休題。作者ブッツァーティは新聞記者として定年まで勤めながら、小説を著しコミックまで手掛けていた(通りで明快なイメージを持つ短編ばかり)そうで、その読み口の軽さからもジェイムズ・サーバーをちょっと連想したりした。時代的にもたぶんそう離れてないはず。またしても閑話休題。印象としては、表題作(犬という種のけなげさも裏テーマに感じられるけど飽くまでオマケ扱い)はじめ聖書のエピソードを連想させる短編が多い。また聖人たちがあの世でコミュニティを作ってわりかし俗っぽく暮らしているというアイデアも複数作で用いられていて面白かった。個人的なベストは入院患者の卑小な優越感と病状への怯えが絡み合って不条理感を醸す『七階』。本国で戯曲化されているだけあって、ラストシーンが映像的な点ともども確かにこれはしごく舞台劇向き。