バンパイア 昭和不老不死伝説

満喫さまがリクエストに応えて全5巻入荷してくれた!ありがとーありがとー。ちゃんと続編の「近未来不老不死伝説バンパイア」既刊2巻も入れてくれたよ!青年誌に移ってからの徳弘正也の作品は初めて読んだけど、社会問題をこうまで力強くエンタテインメントに変換していたとは驚愕。一巻あたりの物語密度の高さはちょっと異常なまでだと思う。一気に読むと面白さが増すタイプっぽい。しかし読み終えてから気づいたけど、タイトルと比して主人公たちの政治意識はバブル崩壊後で経済破綻前夜の平成年代の色合いが濃い。それでも作者は昭和のまだ人情味が感じられた空気にこだわったという事なのか、あるいは実際に劇中では昭和年代だったという事なのか。まあヒロインのマリアが昇平に折にふれてした昔語りは昭和テイストの濃縮されたものだったから、昭和という時代を総括しなければ現代は描けないということに尽きるのかも。それにしても、登場人物の配置に無駄がないのは凄いですね。梅津のおっさんや愛子夫人とか人としての矮小さがなんともいえずいじらしい。でもキャラクターとして最も完成度が高いのは高潔な人物から序々に狂信者へと様相を変えていく十文字篤彦ですね。彼の変貌を見ていると一神教の持つ恐ろしさがひしひしと伝わってくる。善意も悪意も、結局のところ個人の欲望の変形であり、その事を忘れた時に人は天使の衣を着た獣となる。まるで原始宗教における女神のように奔放な行動と全知の香りをまとったマリアが、偶像化され神聖視されることで逆に追い詰められていく様子は、今の世界を席巻している宗教事情の危うさを暗に示しているようで圧巻。なお現在連載中の「近未来不老不死伝説バンパイア」の方は台詞まわしにもキャラ描写にもカリスマ性が比較として足りてないのが残念。状況設定の方はいい線いってる(目には目を式法律により街頭で生体鋸引きとか)と思うんで、人物をまったく一新してみたらあるいは良かったのかも。