蝶のみちゆき

蝶のみちゆき (SPコミックス)

蝶のみちゆき (SPコミックス)

高浜寛の描く女たちに心打たれるのは、彼女らが他者や社会との相互理解が絶望的に難しいと予感したり悟っていたりしても、なお自分の心の中に伸び伸びと陽のあたる場所を持ち続けているからだ。そのすぐにも折れてしまいそうな精神の在り様は、そんなものには無関心を決め込んで襲ってくる悪意や運命の淡々とした容赦ない仕打ちを逆光に背負い、ページの上に鈍い輝きを定着させる。
かむろ、太夫、遣り手と遊里の女三態を素に近づけて描いた人物の実在感、ミステリーの構造に似て、読み終えたあとに布石の要素を再度拾っていける密な章立てといい、力作。