2020年5月に観た映画まとめ

9人の翻訳家  囚われたベストセラー ('19 フランス・ベルギー/監督:レジス・ロワンサル)

世界的ベストセラー小説の各国語翻訳者たちが、事前漏洩を防ぐために閉鎖空間に集められたという実際のエピソードを元にした脚本。映像の迫力も、演出の捻りもテレビスペシャルレベルかなあという印象。冷たい都会的スタイリッシュが見どころかな。

2020年夏期のアニメ視聴状況

なんというかシームレスにアフターコロナ状態になった感がありますね。新作が延期しても案外すんなり受け入れられているというか。

ムヒョとロージーの魔法律相談所 第二期(NETFLIX):ビジュアルはむしろ第一期より充実。構成や演出も原作理解の深さが感じられるが、思った以上にスローペースで、原作消化にあと4,5クールはかかりそう。

 

(前期より継続)

遊☆戯☆王SEVENS(ニコニコ動画):一か月休止したり再開したり。それでも、この作品の朗らかさと楽しさにはホッとさせられる。

 

ネトフリオリジナルアニメでは

「東京沈没2020」をほぼ一気見。レイブカルチャーやラップを人類は絶滅寸前まで手放さないであろうという湯浅哲学が何より印象に残った。人の死にざまは選びようがなく、いきざまこそ重要であるというゲムオブスロ美学が活かされているあたりも、エンタメ作品最先端を感じさせるシリーズだった。

数か月前にシーズン5で完結した「シーラとプリンセス戦士」も途中で止まっていたが視聴再開。完璧なキャラクターは誰もおらず、助け合う心こそが世界を救うと明確に打ち出したテーマが、ストーリーの要所要所を新鮮に見せていた。意外と高いSF成分も見ごたえがあった。

 

第57回2020夏調査

アニメ調査室(仮)さんにて開催中。以下、回答記事です。

 

2020夏調査(2020/4-6月期、終了アニメ、32作品) 第57回

01,球詠,x
02,アルテ,x
03,number24,x
04,プランダラ,x
05,かくしごと,x

06,継つぐもも,x
07,グレイプニル,x
08,啄木鳥探偵處,B
09,困ったじいさん,x
10,波よ聞いてくれ,x

11,神之塔 Tower of God,x
12,BNA ビー・エヌ・エー,B
13,おしりたんてい (4期),x
14,LISTENERS リスナーズ,x
15,イエスタデイをうたって,x

16,社長、バトルの時間です!,x
17,BanG Dream! 3rd Season,x
18,アルゴナビス from BanG Dream!,x
19,A3! SEASON SPRING & SUMMER,x
20,かぐや様は告らせたい? 天才たちの恋愛頭脳戦 (2期),x

21,本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでられません 第2部,x
22,乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…,x
23,白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE,x
24,邪神ちゃんドロップキック' (2期),x
25,八男って、それはないでしょう!,x

26,新サクラ大戦 the Animation,B
27,プリンセスコネクト! Re:Dive,x
28,(TV初放送) ケンガンアシュラ,x
29,(全 8話) 俺の指で乱れろ。 閉店後二人きりのサロンで…,x
30,(全13話) <Infinite Dendrogram> インフィニット・デンドログラム,x

31,(全12話) はてな☆イリュージョン,x
32,パウ・パトロール シーズン2,x

 

《寸評》 

「啄木鳥探偵處」B:カラフルな木版画のような色彩設計が特徴的。他人を省みることを苦手としていた啄木が、最終話では女性それも年端もゆかぬ少女のために渾身の句を詠む。いい作品を見たと思う。推理ものだが、それが主軸でない変化球も利いていた。

「BNA ビー・エヌ・エー」B:ジャッキーかわいいよジャッキー。共同体の衝突と多様性の意義を描いてはいるが、格別に同時代性があるかといえばそこまででもなかった。ただし、SNSで有名になりたい獣人少女の関係性への感性には鋭いものがあったと思う。

「新サクラ大戦 the Animation」B:大タイトルの続編ながら、地に足の着いた企画ぶりで安心して楽しめた。恋愛より友情に軸足を置いていたのも良かった。

 

2020年4月に観た映画まとめ

テリー・ギリアムドン・キホーテ ('18 イギリス・スペイン・ポルトガル/監督:テリー・ギリアム)

邦題は直訳の「ドン・キホーテを殺した男」で良かったんじゃないかな。映画制作がいかにエゴイスティックな本質に満ちた行いであるかへの皮相な視点が明確に表現されて。時間軸の交え方はやや冗長。もっとテンポよく脚本を構成できたのではと思ったりした。コメディ的には、鈍器をふりあげる男のシーンが笑えた。あと辺境の場末でのわびしい見世物小屋の印象深さ。

 

ロングデイズ・ジャーニー  この世の涯てへ ('18 中国・フランス/監督:ビー・ガン)

2D版を鑑賞。こちらもどうもシナリオの筋がつかみづらい。ただ、作品そのものが夢という泡でこしらえられているような不思議な感触なので、それが持ち味になっているかといえばその通りだと思う。それにしても後半からの夜市のシーンは素晴らしい。こういう夢を誰しもが一度は見ているのではないだろうか。観客がお互い無意識で繋がるような感覚。

 

2020年3月に観た映画まとめ

幸福路のチー ('17 台湾/監督:ソン・シンイン)
努力して渡米を果たした主人公女性の逡巡が、ひと昔前の台湾風俗や歴史的事件を背景につづられる。全体的なラインとしては高畑監督の「おもひでぽろぽろ」を思わせるが、内面に抱く希望が飛翔するイメージの豊かさは、アニメーションならではで見ごたえがあった。

羅小黒戦記 ('19 中国/監督:MTJJ)
これは中国アニメ史における『AKIRA』にあたるエポックメイクでは?!とクライマックスに至るまでに静かな興奮を覚えた。何度も観たくなる域に達した複数の面で魅力を放つ、エッジでいて柔軟なアクション・キャラクター映画。

スケアリー・ストーリーズ 怖い本 ('19 アメリカ/監督:アンドレ・ウーブレタル)
オチがテーマへと敷衍するグリップが弱いのが残念。救えなかった仲間たちをどう再び拾いあげるのか、もっと提示できることはあった気がするのだ。ティーンエイジャーの描き方の、略化と現代性との兼ね合いはかなり好きな塩梅だった。

音楽 ('19/監督:岩井澤健治)
原作の絵柄を完全再現している凄さと、音楽の力をダイレクトに伝えようとする趣向の力強さにはインパクトがあったが、物語の起伏の少なさは自分はややきつかった。

プリズン・サークル ('19/監督:坂上 香)
社会復帰プログラムを先進的に取り入れた、日本で数少ない民間委託刑務所の内部は非常に興味深く、また収監者の青年たちが端的に語る子供時代の過酷さはほとんど追体験してしまうまでにイメージが鮮明(これはシンプルな線のアニメを用いた演出も秀逸)。収監者には、しばしば自分自身への冷徹な客観視と、的確な表現力を持つ個人が確認できるように思う。これは果たして私の側のバイアスに過ぎないのだろうか。

エセルとアーネスト ふたりの物語 ('16 イギリス・ルクセンブルク/監督:ロジャー・メインウッド)
監督自身の両親を伝記風にあたたかみのある線の手描きアニメーションで回想するスタイル。同じ労働者階級ながら、上昇志向がうっすらとある政治的にも保守派のエセル、声高に述べたいわけではないにしろ社会には立ち止まり考えるべき面も多いと感じているアーネストが、大戦に翻弄されたり-ロンドン大空襲の音響演出は耳を塞ぎたくなる臨場感-、一人息子の成長過程に戸惑いつつも添い遂げる様子は、それぞれの晩年の淡々としたリアルな描写によってより絆の替え難さが浮かび上がる。

(配信で視たもの)

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン ('16 イギリス/監督:テレンス・デイビス)
作中で朗読されるディキンスンの詩だが、文学史上の位置付けに無知なせいか自分にはあまり琴線に触れるところがなかった。エミリ自身の率直さ以上に、その父の懐の深さと現実対応力との兼ね合いに感銘を受けたという事もある。

女神は二度微笑む ('12 インド/監督:スジョイ・ゴーシュ)
ダンスや歌のないタイプの、ハリウッド製サスペンスアクションに寄せた、珍しい(のかな)インド映画。筋書も人物描写も、もう一歩凡庸さから抜け出るに及んでなくて惜しい。

2020春期のアニメ視聴状況

もうすっかりアニメはネット配信をタブレットで視るカラダになってしまいました。

「啄木鳥探偵處」(ニコニコ動画) 明治の東京風俗が興味深い。推理ものとしてはン~…

「遊☆戯☆王SEVENS」(ニコニコ動画) 「ケロロ軍曹」の近藤監督によるコミカルさで新機軸を打ち出す。なお、五月現在COVID-19の影響により放送休止中。

「新サクラ大戦 the Animation」(NETFLIX) 3DCG製作。旧作に引っ張られることなく伸び伸びとした空気が気持ちいい。

 

旧作の再放送(…にタイミングを合わせてNETFLIXで視てる)

未来少年コナン」(NHK総合) 通して視るのはたぶん二度目か三度目。動画、演出の他にも、単発性の高いエピソードの構成のようでいて、さりげなく各話の連携が取られており物語に厚みが積まれていく巧さに気づくことが多い。

一挙配信分

「BNA」(NETFLIX) 第6話まで視聴済。導入の簡潔さや社会問題のスマートな採り入れ方はなるほどネトフリオリジナル。動画の愉しさ、キャストの伸びやかな演技も見ごたえがある。今期イチオシ。

攻殻機動隊SAC_2045」(NETFLIX) 完全独占配信。第一期12話分視聴済。放送前に評判のよくなかった3Dモデル、自分は髪のカタマリ具合が気になる程度かな。裸のIT長者が軽やかにステップを踏んで特殊部隊を避けながら自室のクローゼットに滑り込む回が面白くて何度も視ちゃいますね。後半のドメスティックな展開にはちょっとだけ困惑気味。

 

…あとは、アメリカ人の絶望の深さとアナーキーさに震撼する「ミッドナイト・ゴスペル」とか、なんとなく照準が合った「キポとワンダービーストの冒険」(猫の毛玉吐き回よかった)とかをボチボチとネトフリで視てますね。

第56回2020春調査

アニメ調査室(仮)さんにて開催中。以下、回答記事です。

 

2020春調査(2020/1-3月期、終了アニメ、66+1作品) 第56回

01,pet,x
02,22/7,x
03,ネコぱら,x
04,虚構推理,x
05,なつなぐ!,x

06,ドロヘドロ,S
07,ちはやふる3,x
08,へやキャン△,x
09,恋する小惑星,x
10,耐え子の日常,x

 

11,ボス・ベイビー,x
12,空挺ドラゴンズ,F
13,ダイヤのA actII,x
14,どるふろ 狂乱編,x
15,ジモトがジャパン,x

16,おちゃめなシモン,x
17,ソマリと森の神様,B
18,地縛少年花子くん,x
19,織田シナモン信長,x
20,異世界かるてっと2,x

 

21,ランウェイで笑って,x
22,けだまのゴンじろー,x
23,ダーウィンズゲーム,x
24,アイカツオンパレード!,x
25,デュエル・マスターズ!!,x

26,魔入りました! 入間くん,F
27,ラディアン 第2シリーズ,x
28,群れなせ! シートン学園,x
29,ゲゲゲの鬼太郎 (第6期),x
30,ポチっと発明ピカちんキット,x

 

31,フライングベイビーズ☆プチ,x
32,ねこねこ日本史 第4シリーズ,x
33,アバローのプリンセス エレナ,x
34,あはれ! 名作くん 第4シリーズ,x
35,かいじゅうステップ ワンダバダ,x

36,スター☆トゥインクルプリキュア,x
37,ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。,x
38,うちタマ?! うちのタマ知りませんか?,x
39,SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!,x
40,Fate/Grand Order 絶対魔獣戦線バビロニア,F

 

41,痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。,x
42,(12話までの暫定評価) <Infinite Dendrogram> インフィニット・デンドログラム,x
43,ファンタシースターオンライン2 エピソード・オラクル,x
44,カードファイト!!ヴァンガード (2019 新右衛門編),x
45,マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝,x

46,八十亀ちゃんかんさつにっき 2さつめ,x
47,理系が恋に落ちたので証明してみた。,x
48,推しが武道館いってくれたら死ぬ,x
49,僕のヒーローアカデミア 第4期,x
50,宝石商リチャード氏の謎鑑定,x

 

51,魔術士オーフェンはぐれ旅,x
52,七つの大罪 神々の逆鱗,x
53,映像研には手を出すな!,F
54,歌舞伎町シャーロック,B
55,爆丸バトルプラネット,x

56,異種族レビュアーズ,x
57,ARP Backstage Pass,x
58,Bラッパーズストリート,x
59,ハイキュー!! TO THE TOP,x
60,id:INVADED イド:インヴェイデッド,A

 

61,(1月終了) バビロン,x
62,(TV放送版) へんたつ,x
63,(全8話) おーばーふろぉ,x
64,(全12話) アズールレーン,x
65,(地上波初放送) 7SEEDS (1期),x

66,(ネット配信) ベイブレードバースト ガチ,x 

参考調査

t1,(11話までの暫定評価) はてな☆イリュージョン,x

 

[寸評]

ドロヘドロ:S 最高に楽しく面白い。凄惨にバイオレンスな世界で軽やかになにか希望まで抱かせる手際、アニメとはまさしく魔法の事だと作品そのもので示した。

ソマリと森の神様:B ハイファンタジーとしての気合を見せる各種設定デザイン、子供の行動原理を真摯に反映させた描写が光っていた。差別の厳しさにも逃げず取り組んでいた。

歌舞伎町シャーロック:B 人格障害発達障害を持つ者のみならず、定型発達者の生き辛さを終盤にまで引っ張って絡めるなど挑戦的なシリーズ構成。最終話はやるせなさから泣ける変化球。オリジナルアニメならではの味があった。

id:INVADED イド:インヴェイデッド:A 複雑なギミックや入れ子構造のストーリーをここまで分かりやすく、かつクールに描ける監督の手腕は並じゃない。キャラクター各々の濃さも1クールでは通常収まらないレベルだった。また、情の入れ方の演出コントロールが抜群に上手い。