2023年11月に観た映画

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン ('23 アメリカ/監督:マーティン・スコセッシ)
人種や性別に拠る差別をまるで当然の前提であり、神から与えられた権利であるかのように振る舞う白人男性のコミュニティの残酷さ、その対象にされた者、取り込まれ抱き込まれた者それぞれの苦悩と苦痛を描く。叙事詩のように美しい撮影ぶりに三時間半の長さが苦にならない。最後にはギリギリで自らの魂を救った主人公。それでも許せない一線を引くことでまた別の形で愛を貫いたその妻。西部劇のように始まり、ラジオショー仕立てで幕を閉じる趣向の意図は、変わらない差別の内実と、時代によって移ってきた観点との対比を感じさせ、いまここで映画をつくる意味を突きつけてくる監督のまっすぐな意志を感じる。静かに、網膜に焼付けられる輪舞のエピローグ。世界の花を伝え続ける者たちの戦いは終わらない。