「CODE:BREAKER」全13話視聴完了

しんどい終幕になるだろなーと避けていたら、ネット配信の無料期間が終わっていたという自分にとってのいわくつきなシリーズ。で、やっぱりつらかった。何がつらいというと、劇中直接の加害黒幕であり、最大の被害者でもある人見のキャラメイキングが視ていて実にしんどかった。
この作品は少年漫画原作でありながらも"人や希望が持つ無限の可能性"よりも"人間が社会構造と無関係でいられないこと、さらには理念体ではないがための有限性"を優先して描いている。それゆえに、人見のルックスは若々しいデザインで、性格も同様に主人公の仲間たちと並べるラインで設計されなければなかった。テンプレート化した悪役の要素を持ってきた方がおそらく視聴者はさっぱりと視られたと思うが、そうは監督の問屋は卸さなかった。かてて加えて、テロリズムを実行に移すまでの動機の内実を、終盤において数段に分けて提示してくるという念の入れよう。そうまでしないと"現状の秩序を守ること"と"どうにもならないところまでいった世界の腐敗をいっそ崩してしまいたい"という必要と欲求のギリギリの対峙を描けなかった。その真摯な姿勢が理解できるだけに、どこかデコボコとした複数の演出要素が回を追うごとに重みをましていくように感じられて最後あたりの数話は視るのがおっくうになったきらいさえあった。
しかしまあ、結果をいうと救われた気分が6:4でモヤモヤした気持ちを払拭した。公園で手向けの白い花束の山を残して何も言わずに桜(完全に"傍観者"という名の視聴者の身代わり視点だった珍しいヒロインキャラ)の前から姿を消した大神の、裏の存在に徹したストイシズムで、シリーズの統一性を生み出したドラマの静かなクライマックス部分は、丁寧なモブ作画ぶりもあって改心の演出。…人間は年を経ると言ってることやってる事が変わるし、親は選べないし、理不尽に犯罪に巻き込まれたりする。"それでも、善きことを為せ。汝なりに"というテーマには到達した瞬間を目撃したような淡い感動があった。きっと自分にとっては長く印象に残る作品になる。
中盤までの、キャラクターが揃いきるテンポが遅かったり、学園パートとの空気の移り変わりが滑らかとは言いがたかったりと、ちょっとした注文を付けたくなる箇所も多かったが、それぞれの異能力の絵としての見せ方、カメラ位置が実はバラエティ豊かだったりするアクションシーンの堅実な底力といい、視ていてそこはかとなく好感の持てる作品だった。スタッフやキャストに「お疲れ様でした」とねぎらいを述べたくなるような。