最近読んだ漫画:2023春

K2

公式サイトで400話以上が数か月に渡って無料開放という太っ腹企画で、この名作が広く知られるようになって目出度いし、かつて雑誌連載で読んでいた自分も、まとめて読み直すと大河ものの風格があらたに付け加えられて非常に楽しめた。こういう肩の凝らない読みやすい漫画ほど、日々の憂さを紛らわせてくれるものはない。そして得てして、取材が定期連載シリーズだと思えないほど緻密なものなのだ、こういう作品は。絵柄は昭和劇画の系譜に入るが、たとえば女性キャラの扱いが多様性に満ちているのも高評価点。


強殖装甲ガイバー

こちらも単行本20巻分期間限定開放という企画で、再読ながら楽しませてもらった。昭和年代に始まった作品だが、独創的なギミックアイデアと王道ストーリーという組み合わせで何度でも飽きずに読める。電子版として画面で見ると、高屋氏の生物感を強調する細い線で省略せずにペンを置いていく密度の高い原稿がよく味わえる気がした。その反面、陰謀組織に包囲されて逃げ場がない主人公たちの内面に同調する閉塞感は、紙媒体の方が迫るものがあるかもしれない。


男たち

原案クレジットに七三太朗。全2巻。冒頭の東京下町の様子(黒猫を赤ん坊のように抱いて路肩にしゃがんでいる老婆が意味不明なだけに鮮烈)から勝手に60年代ぐらいかと思いながら読んでいたが、あみん「待つわ」が劇中で口ずさまれることなどからどうも舞台は80年代らしい。で、あらためて思ったのは一番古めかしいのは視点主人公のサラリーマン青年だなと。真面目だけで生き残れる時代は済んでいたように記憶しているのだが。それは読み手へのサービス精神みたいな配慮の部分なのかな。短い連作ながらもピリッと締まっている中で一番読み応えがあったのは愛人のキャバレーのために借金がかさみ山奥のタコ部屋へ飛ばされる男のエピソード。人物の性格描写、挙動がすごいリアルでいてユーモラス。あと当時でいうオカマホステスの内面の葛藤をあまり茶化してない点も当時の風潮からすると先進的。


砂の都

住民が知らぬ間に移動しその形を変えてゆく街で、青年はひとりの少女と知り合う。その少女の印象が、ルックスの良さへの点数とはまた別の特有の鮮明さ、つまり青年の眼からみた忘れえぬ人のイメージとしてコマの外を越えてこちらにも映り、そして登場人物たちの思いの表面が、さらさらと砂丘が流れるように移ろいでいく。だけれどその核には…