パシフィック・リム('13 米/監督:ギレルモ・デル・トロ)

 (2D字幕版で観賞)
 怪獣と巨大人型操縦ロボットと巨大な壁と原子力の四つ巴。特に原子力エンジンを捨て身の攻撃用途に使う終盤には、2年半前に深刻な原子力災害を起こした国の住民としては(原子力の墓場を用意したんだな…)という解釈で気持ちをなだめることができて、監督の思惑はさておき娯楽性の高さがそんな枝葉な部分に現われている気がしたりした。
 さて今回、自分の嗜好を再確認してしまったのはクライマックスでたっぷり描かれる夜の香港の街での迎撃描写。ここは怪獣映画に興味がさほどない自分にとっては画面でどんな攻撃や一進一退が繰り広げられているか、照明が暗く撮られた中で把握するのはかなり困難だった。自ずと(どちらかといえばロボット対ロボットの方がいいなあ)と無粋なことを考えてしまった。映画冒頭の、対ナイフヘッドのアラスカ沖の戦闘なんかは、漁船を助けるイベントが挟まっていたことで興味を強く保てたのだけど。
 とはいえ、音響含めて全編にみなぎる巨大な物体の醸す重量感はこの特殊な題材ならでは。映画館まで足を運べて良かったと思える満足度が得られた。
 ドラマ部分では、長年の恩人に別れを告げるマコ、秘めていた思いを一気にあふれさせ相手をかきいだくマコ両方のシーンでの菊池凛子のコントロールの利いた演技が特に印象に残った。キャスティングもおおむね良好。主人公俳優はスチルで見た時は(なんだか華に欠けてるような)と思っていたが、動いている姿には実際の米軍海兵隊に居そうな絶妙な雰囲気があったし、司令官役の俳優の豊かな声量もハッタリの強い内容にマッチしていた。

 ところで常々、近年のハリウッド映画におけるSFジャンルへの傾倒ぶり、引いてはその表現手法への解釈に違和感があったのだけど、それらと比べても直球な企画ぶりがグラマラスなまでに成立したこの作品を観ていると、それらのモヤモヤが解消されるような爽快感があった。次元への裂け目をつくった存在や、その原理の説明なんて無くてもいいよね!ガツーンドカーンがあればそれでいいのだ!! …という具合で。