「絶園のテンペスト」第14話『あけましておめでとう』

『外れた世界の関節』は戻ったものの、依然「はじまりの樹」は露出したまま、人類へ無言の影響力を行使している。物語は、愛花殺しの犯人を探す目的と並行して「絶園の魔法使い」を見つけ出すという新しい要素を含み、同時に葉風が吉野に惚れたことにより現在進行形で恋愛ドラマが展開していくこととなる。
驚いたのは、青春恋愛ものへと大きく切られた舵に違和感がない事。もともと、物語ジャンルを意図的にあいまいに提示していたためでもあるが、前章からの不穏な空気を繋ぐ役割として新たに投入されたキャラクターである羽村めぐむの舞台への馴染ませ方が自然に行ったことで、恋愛中心思考とゆるやかで集団共有された厭世感とが鎖のように密接に結ばれているというモチーフ表現が成功している。やはり、この作品は底知れない。色々な意味で。