「絶園のテンペスト」第7話『ファースト・キス』

吉野視点で語られる過去回想回ふたつめ。前回は真広との出会いの思い出だったが、今回はその義妹であり意中の人の愛花との逢瀬の数々。それらすべてが夏のシーンであり、物語現在時の寒風吹きすさぶ冬とは構図として対照している。吉野から見た愛花はさまざまな位相の陽射しに包まれており、精密なコンテによりその印象度の強さが視聴者にも伝わる。シナリオからは彼女が真広と吉野のどちらにも粉をかけ決定的な行為に至らせないことで互いの仲をかき回そうとしているようでいて逆にあやうい均衡を保たせようとしている(夜のベランダに用意されたスイカ切り身はなぜかひとつ多い三個)とも取れる矛盾した面を持っていることを絶妙な会話で示し、演出からは真広と吉野にとって愛花がいかに日常から特別に鮮やかに切り取られた存在だったかを直観に訴える形で描く。彼女とこっそり行ったひまわり畑で吉野の回想は終わるが、ひまわりは夏の迷路の素材としても用いられる定番の植物である。