「坂道のアポロン」第7話『ナウズ・ザ・タイム』

百合香が描いた油絵にまつわるダイアローグにて(余談ながらここのFlashアニメっぽさが前々番組「テルマエロマエ」っぽくてちょっと面白い)遅ればせながら、『このアニメにおけるアポロンって何ぞや?』という命題に思い至った。油絵のモデルとなったのは千太郎だし、シリーズほとんど初めての濡れ場に近い雰囲気があったシーンの主役の一人も同じく千太郎-ここの成り行きの自然なエロスは、視点主人公として第一な薫の同性愛に近い嫉妬との作品上の雰囲気バランスを取る巧さがあった-であることから、多情で音楽を好む太陽神の象徴を背負うのは、やはり千太郎だなととりあえずは考えた。が、後半の学園祭ステージでのたまさかのセッションである。ここでの演奏シーンの完成度は、もはやアニメ界隈で長く語られる事は確実と思われるが、その評判を地方ゆえの放送ラグからすでに知っていた自分としては、ジャズを媒介として性格も階層も異なるふたりが深く広く繋がり認め合うその磁場そのものが、すなわち「アポロン」なのだと気付かされた感動に浸っていた。アポロンは、そういえば学芸の神でもあったはず。薫だけでもなく、千太郎だけでもない。いっときの年頃にふいに降り立つ瞬間。これは珍しいほどにストレートな青春アニメなのだった。