話数単位で選ぶ、2017年TVアニメ10選

今年も『新米小僧の見習日記』さん発祥の企画に参加させていただきます。

ルール
・2017年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。

ALL OUT!!」 第15話 『チームメイト』 脚本:横谷昌宏 絵コンテ:佐山聖子 演出:西畑佑紀、浜田将太 作画監督:吉川佳織、YU HYUN JIN
部活をするにも金、そして保護者の理解が要るという当然の前提をあえて1話を使ってエピソードに組み立てるという企図が斬新。はやくに亡くした親代わりに弟を育てる会社員の兄にキャスティングされた保村 真の雑事に疲れた風情の演技が絶品だった。微妙に乱れた男所帯の室内を描いた美術も同様。

鬼平」 第7話 『瓶割り小僧』 脚本:稲本達郎 絵コンテ:長岡康史 演出:殿勝秀樹、波多正美、Kim Min-sun 作画監督:Kim Eun-sun、Kim Seok-young、Eom Ik-hyun
丁寧な表情作画と間合いのある演出。シリーズの中で一番見入った回。刑罰が苛烈な時代に生きる人々のメンタリティに共感と驚きの両方が浮かぶ。

リトルウィッチアカデミア」 第8話 『眠れる夢のスーシィ』 脚本:うえのきみこ 絵コンテ:今石洋之 演出:中園真登 作画監督:坂本 勝、長谷川哲也
クールなスーシィがアッコに寄せる好奇心と、それ以外の何か。ホラーモチーフで通した点に逆にスタッフの深い愛を感じる。今年最高にキュートなエピソード。

有頂天家族2」 第6話 『有馬地獄』 脚本:檜垣 亮 絵コンテ:TeamP.A 演出:菅沼芙実彦 作画監督大東百合恵 秋山有希
温泉用語の『地獄』を仏教界の地獄に連想させて、それがビジュアル化される興奮。しかも妙に地方の現実めいてて硫黄が目にしみる。

昭和元禄落語心中 助六再び篇」 第12話 (サブタイトルなし) 脚本:熊谷 純 絵コンテ:畠山 守 演出:久保太郎 総作画監督中嶋敦子、木村友美 作画監督:森本浩文、小田真弓、木村友美、中島美子、野口莉英子、清水勝祐、臼井篤史
終わりよければすべて好し。すべての憂さと割り切れなさは、いずれは噺の糧となる。喫茶店での小夏と樋口の会話シーンは向田邦子ドラマのような趣きで特に印象深い。

ID-0」 第10話 『縮退履歴』 脚本:黒田洋介 絵コンテ:須永 司 演出:金子祥之 2D作画監督:菅野千愛
義憤と開き直った私情とが目まぐるしく二人の人物の間で行き交う。もはやどちらがより邪悪で偽善なのかも分からない混乱した情況をシリーズ唯一といって過言でないフィギュアロボット同士の対決の勢いで突破するカタルシス子安武人興津和幸の主要キャストの演技も熱い。

ベルセルク」 第19話 『祈りの奥義』 脚本:深見 真 絵コンテ:板垣 伸 CG演出:佐藤 誠、田辺慎吾(作画パート演出)
押し寄せる水といった荒れ狂う自然精霊を3DCGを活かしてスペクタクルに描いた。宗教と魔術の本質的類似性を語るシルケーの講釈、少年イシドロと村老人のお互いの感性を交歓しあうやり取りも含蓄がある。

タイガーマスクW」 第37話 『さらば虎よ』 脚本:千葉克彦 絵コンテ:小村敏明 作画監督:香川 久、羽山淳一、横田 守
往年のアニメシリーズでは定番だった、総決算作画祭。決戦ステージというドラマの盛り上がりと同調して、理想的なアニメの最終回を久しぶりに見たなという感慨。

ザ・リフレクション」 第7話『 チーム・アイガイ』 脚本:鈴木やすゆき 絵コンテ:川瀬敏文 演出:加藤 顕 作画監督:大塚八愛、小田真弓、佐藤浩一、清水勝祐、中島里恵
ベテランキャストが多い本作でも、この回の玄田哲章の長い語りかけは最高の効果を引き出していた。ヒロインの逡巡が始まる隠喩としての交差点の表象も渋い。

血界戦線 & BEYOND」 第10話 『BRATATAT MOM』 脚本:加茂靖子 絵コンテ・演出:佐々木美和 作画監督:長谷部敦志、横屋健太、藤田しげる、林祐己、佐々木美和
分かり合いを模索する親子の構図が主人公組織が目標する地平線と重なる。およそ見事なシリーズ構成ぶりを見せ付けた。子どもの憂いを主観的に演出する細心さも見逃せない。


補足:ネット配信オリジナルからの選出2作(来年以降のアニメ発信の更なる変化を見越して)
「ヴォルトロン」 S1E8 『再生』
肥満体の地球人少年ハンクと、ゴツゴツとしたたくましい肢体を持つバルメラ星の少女シェイとの淡いロマンスで幕が閉じる連続エピソードの完結編。ルックス至上主義に拠らない恋愛描写を自然に描くことが可能かという、アニメを視る上で近年抱いていた自分の疑問にあっさりと答えを出してくれた。
「ネオ・ヨキオ」 S1E4 『ハンプトンズの水の魔術』
プールにかかった魔術のせいで性転換してしまいグラマー美女となった親友といういきあたりばったり(で安易な「らんま1/2」パロディ)なガジェットだが、後半には意外とミステリーのギミックが機能してくる。パーティー・ピープル精神に浸かりまくっている主人公の右往左往が見所。