エアーズ家の没落(上・下)

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

最後まで読むと分かるのだが、これはわりかし作者の新機軸(男性の一人称語りというスタイルもだけど)。幻想小説のようでもあるけれど、ミステリ要素もちゃんと入っているのでエンタテイメント性がしっかりと高い。作品世界への引き込み線となっている緻密な資料の用い方、お屋敷のひと気のない寂しさとパーティの熱気という対照的な情景描写それぞれの鮮やかさといった部分要素ひとつ取ってもやはり抜群の筆力。それにしてもヒロインのルックスにまったく貴族令嬢の紋切り型が入ってないのにはまずもって一本取られた。それでいてその事が核心に据え置かれているわけでもないというのがより作品の現実味を高めていて。