ぼくの妻はエイリアン

僕の妻はエイリアン 「高機能自閉症」との不思議な結婚生活

僕の妻はエイリアン 「高機能自閉症」との不思議な結婚生活

あとがきまで読むと一つのサプライズな仕掛けがある…という書評を見かけて読んでみた高機能自閉症にまつわるエッセイ本。仕掛けについては文体から早々に感づいたが、それでも肝障害をわずらうほどに飲酒に逃避してしまった過去もある他者の気持ちを慮りづらいという特性を持つ妻と、彼女にときに感情を爆発させるほど苛立ちながらも十年間夫婦として暮らしを共にしてきた夫の前を向いた姿勢にはじわじわと感動させられた。それにしても、大学で言語学を修め、ネット上の知人から翻訳の下調べの仕事を回してもらうほどのスキルを持ち、海外で一人旅行を楽しめるほどのバイタリティを持つ個人を、まずは企業生活に合わないという理由を筆頭に非健常者とカテゴライズしてしまう現代社会にはやはり歪みを感じずにはいられない。“ちょっと変わっててとっつきにくいけど根気のある人”という評価のままで、彼女のようなボーダーラインの存在がもっと気楽に暮らせるようになる変化が訪れれば、それは“健常者”にとっても福音になるはずだと思うんだけどね。