クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲('01/監督:原恵一)

二度目の鑑賞。ちなみにどちらもTVスペシャルにて。ちょっと前にみた同監督の「戦国大合戦」よりもしんちゃん一家の活躍度が高くて、それでいてゲストキャラへの共感の誘い方も自然で、なるほどシリーズ最高傑作の呼び名は伊達じゃないなと再確認。何が一番巧みかというと、展開スピードの操り方。一番印象的な切り替え点は、チャコがひろしに家族をつくってみるといいと言われて顔色を変えるところ。クールビューティーを演じ続けていた彼女の弱点があらわれる事で、首領であるケンよりもチャコの方が組織の精神的支柱の要となっていた事情が暗に示される。と同時に事態収集の伏線の機能も果たす。あと父親ひろしの強い足アブラ臭が、好悪相反する家族の絆を象徴しているそのアイデアの上手さ。結局未来に進むことを選んだ大衆たちはみなブラウン管の前でチャコの叱咤にうなだれているというその一抹の苦味がなんともはや、もう。重いけど捨てられないものがあるというのはやはり幸せな事なのかもしれない。しんちゃんの決めゼリフ「ずるいぞ!」にしても、その効果の補助線としてチャコの若さと美しさを無心に称える形となった語りかけが事前に置いてある事で、生きることへの色気が出た彼女の心理がわかりやすくなってる。無駄なところも余分なところもない演出具合ですよね。