まだ人間じゃない

まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)

まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)

親から見捨てられた12歳以下の子供を収容し“安楽死”させる未来社会を舞台とした表題作は(人工中絶賛成派をおちょくったとして)フェミニズム系女性作家から発表当時怒られたと制作メモでディックが言ってるけど、フラットに読むとむしろユーモアの味が勝っていて特定の思想層への悪意はほとんど感じられなかった。今も昔も、人間は自分たちの都合で弱い立場の生命を致命的に選別してきたのであり、それがいつ一線を踏み越えるかは神のみぞ知る。ならば、無為な抵抗と知りつつもこの作品にでてくる数学修士のように疑問を呈してみるのも悪くはない。ただそれだけの問題なんだと思う。他収録作では徹底して感覚的な責め苦を味わえる「CM地獄」が面白かったけど、この邦題はどうなんだろとも思った…