時の声(J・G・バラード短編全集l)

バラードの短編はいくつか読んできたが、正直あまりよく分からない。が、こうして発表順に構成された作品集にあたってみて"文明に懐疑を唱え続ける"作家だということは分かった気がする。…ただ今回も、抽象度の高い表題作はあまりつかみどころがない。「プリマ・ベラドンナ」の華麗なヒロインの焦燥感やイカロスの故事を思わせる「集中都市」の青年主人公の苛立ちなどは共感できるところがあった。