「機動戦士ガンダムAGE」全49話視聴完了

『一族三世代を描く大河ドラマ』というコンセプトの成功率は五分から六分といった感じ。一世紀の時間経過から来る時代のうねりといった外的要素からくるダイナミズムを描くには、展開をはしょりすぎている構成具合であったのが減点ポイント。ただ、三世代の真ん中の章の主人公に充てられたアセム・アスノが能力的には"秀才の凡人"であったという設定は白眉だった。総論としては(言い方は下世話になるが)ワンマン手腕クリエイターがやりたいようにやってみたら、迷走した時期もあったけれど意外と悪くない目がでた といった感じで、ガンダムという大舞台でバクチ打ちを見せてもらったという意味込みで、予想外に楽しませてもらった。基本設定に構成と脚本を担当した日野氏を支えたスタッフの健闘も、目に清々しく映って気持ちよく視聴することができた。ガンダムというブランドの懐の豊かさを示せた点でも、商売の実質はともかくとして結果的にはプラス方向に働いたと思う。

黄金の少年、エメラルドの少女

黄金の少年、エメラルドの少女

黄金の少年、エメラルドの少女

冒頭に置かれた中篇「優しさ」の一本の映画をみるような深みのある味わいから〆を取る表題作の手法披露のこれ見よがしさのない完璧な落ち着きぶり。個々の完成度と同じほどに構成がすぐれた短編集だった。中国で生まれアメリカで暮らす作者の、ローカルに描写しながらも視点はグローバルに置かれている(こんな大枠の批評は彼女の文体のさりげなさには合わないけれども)作風のなんと伸びやかなことか。運命に翻弄される人々の悲哀がテーマながらも、ユーモアと風通しの良さも感じられるのはそのために思う。不幸の概要はおおむねパターンが決まっている。しかしそこから生まれる精神の波紋は同じものが一つとしてない。作者が見続けているのはそんな人間の不可思議さから生まれる可能性の奥行きなのだと思う。

ヴァージニア('11/監督・フランシス・コッポラ)

コッポラ作品は実をいうと「地獄の黙示録」以外を観た記憶がないんで、そんな自分がいうのも何なんだが… えらく低予算な台所事情を匂わせる仕上がりだなあと。主人公作家とその妻とがネット電話で会話するシーンの画面二分割には悪い意味で驚かされた。新境地を開拓しようと悩んでいるアル中の小説家が、サイン会のために赴いた片田舎でとある殺人事件の磁場に巻き込まれてゆくという粗筋なのだが、幻想と現実とのあわいの描き方、テーマとしての『作家の業』の浮き彫り具合がいまひとつぎこちない。シーンごとの印象はそれなりに強かった(古めかしい教会学校の場面全般と、少女が浮かび上がるクライマックス)ので、つまりは不遇な作品だったといえるのかもしれない。もうひとつふたつ、味付けが加えられていればあるいは。