「ファイ・ブレイン2 神のパズル」全25話視聴完了

主人公カイトのシリーズ最終の対戦相手となったフリーセルは、精神指向が微妙に前シリーズのルークと違うとはいえ、思い込みと孤独感からカイトを自分の閉じた世界へ引き込もうとしたという意味では同じであり、そのループ感が終盤の雰囲気の盛り上がりの足を引張ったような気もする。ただし中盤の敵グループ「オルペウス・オーダーズ」が個別に心を開いて離脱していく流れや再登場したルークが心理的成長を見せた副筋にあたる回、はたまたコメディリリーフとしてのビーチリゾート回など素晴らしい出来のエピソードは多々あった。放映終了直後に正式発表された来る第3期にも手堅く期待を寄せることが出来る。

シップブレイカー

シップブレイカー (ハヤカワ文庫SF)

シップブレイカー (ハヤカワ文庫SF)

ヤングアダルト向けの冒険小説というラベリングらしいが、人の死に様はなかなかに凄まじいし、基本的に"他人は信じられない"という世界観が採られている。しかし"絶体絶命に遭ったり大怪我したけどたまたま死ななかった"割合の多さに関しては確かに作者の一般向け作品とは趣きが異なる。作中で、人物に対して『ラッキー』という冠称がひんぱんに用いられるが、自分は多少、(努力に見合った程度の)幸運に恵まれるに違いないと信じられる精神の在り様こそが、若さの特権であり意義であるという作者の意思表明なのだろうと思う。そのあたりの割り切りが、バチガルピは作家としては若手なのにスパッと出来てて頼もしい。
都市がいくつも水没して、いまなお定期的に超弩級のハリケーンが襲来する渚のスラムで育った少年ネイラー(釘よりマシという意味で父が付けた名前)が、軽作業員として危険な廃船解体に従事する中で、偶然に見つけた座礁船で金持ち娘のニタと出会う。そこから陸に水にと冒険の舞台が広がっていくが、同じぐらいにスリリングなのが危険な相手との心理かけひきなあたりは、これもバチガルピらしい箇所に感じた。波の上をすべるように走るカーボン製の高速艇「クリッパー船」が作品の爽やかなイメージになっているが、読み心地も非常に滑らかで痛快だった。若いキャラクターたちのその後の物語もいつか読めたらいいなと思う。

「もやしもんリターンズ」全11話視聴完了

序盤は及川の大学敷地内における疑問、中盤は学園での収穫祭、後半を使って長谷川の婚約始末&ゼミ選抜メンバーふらんす道中でまとめた構成は、とっちらかり気味ではあったがかえってそれが気楽に視られる雰囲気も醸しだされていた。菌を細心の注意を払って扱えば美味しい実りが与えられるように、人間関係も真心を尽くせばきっと良い事がある…といった〆ぶりで、最初から最後まで他の追随をゆるさない気持ちのいい娯楽番組だった。アニメーションも地味ながら丁寧で眼福。

マギ

イスラム文化圏をモデルとしたかなり珍しいアニメだが、青い肌の「ジン」と呼称される魔人の巨大なスケール感をみせたアバンはじめ、そのアドバンテージを余すところなく発揮した、相当にレベルの高い初回だった。日本アニメのお約束サービスを踏襲した上で、その枠を超えた一種、格調高い演出を施せるのが舛成孝二監督だなと強く認識。鷺巣詩郎によるオーケストラを用いた音楽もテレビシリーズとしては破格に豪華な印象を付け加えている。ストーリーテリングとしては、ダブル主人公制で片方のより無垢にみえる少年の方が実は正体不明というミステリ設定が要となりそう。