2023年4月に読んだ本

不死鳥と鏡

色仕掛けにはまって、探偵の役回りを押し付けられる凄腕魔術師という発想がまず天才。ハイファンタジーとミステリーの両方が楽しめる。推理パートのバディ役がまたろくでもない研究室こもり系オタクキャラ(ガチ熟女好き)で… しかし終盤はわりと純愛に収まるので、精緻な長編で面白かった~という満足度の高い読書となる。形式ばってないのに端正な文体もかえって特徴に感じられてよかった。主人公がうぶなわけでもないのに、心や魂、美の真実にこだわる姿勢が作品の屋台骨になっているのがほんと好きだし。 


メアリ・ヴェントーラと第九王国

表題作が寓意のダークファンタジーという印象ですばらしい。かっこいい老婆、フィジカルな活躍はないしやってる事は目覚ましくもないけど主人公の若い娘に掛ける言葉だけでかっこいいぜ。ぴったりのスーツがやがて末っ子に廻ってくる童話のような『これでいいのだスーツ』、よく知らない親戚の葬式でのしらじらした記憶がよみがえる『ミスター・プレスコットが死んだ日』も忘れられない。それにしても『メアリ・ヴェントーラと第九王国』で主人公がこわごわと進んでいく、突き当りにドアのある洞窟のような暗い暗い階段の情景…あの怖れをなぜか私も知っているような気がするんだよな。