竜のかわいい七つの子

ファンタジー要素をストーリーとして展開させる上での手堅さ、読む際の「口当たり」の良いまろやかさ、クセがなくデッサンと画面構成とが整っているため万人に受け入れやすい絵柄、とまさに三拍子そろった話題作。空想性の強い世界観と温かい人間模様とを組み合わせて描かれた七つの連作短編。ユーモア描写(これが特に冴えわたっている二作、江戸時代の絵描きの話『金なし白祿』と中学受験に心揺れる少女が主人公の『わたしのかみさま』が自分はお気に入り)に笑った後に、じんわりと胸にひろがる“おみやげ”を必ずもらえることだろう。