ユメ十夜('06/監:実相寺昭雄 他)

夏目漱石原作を年代もキャリアも様々な監督が競作したオムニバス。最初の三編(実相寺昭雄市川崑清水崇)こそかなり前に読んだ原作の面影を感じたけど、それ以後はかなり脚色が激しくなっていく。最後の第十夜にいたっては完全に漫☆画太郎ワールドで夏目漱石の血縁者が見たら憤激しそうなシロモノ。予想以上にカオスな仕上がりになってて好企画だと思う。キャストやスタッフも意外に豪華だし。でも地元では上映なかったんだよな。くやしい。以下、せっかくなので個別寸評。
第一夜:窓からロケーション無視で見える巨大観覧車、母のようなやさしい妻、店と仕事場がふすま一枚でつながってるとか最も夢らしい境界線の融解ぶりに、あーあるある。導入編らしい一作。
第二夜:怪僧が相手の意味のない根競べ。尿意を我慢してる時見る夢っぽい。
第三夜:香椎由宇は和服も似合うなあ。ホラー色がストレートな一作。臨床医学が未発達だったころのトラウマが切ない。
第四夜:山本耕史といえば光GENJIの童顔の人だったっけか。いい俳優になった(別人みたい。すいません)。この作品での低空を飛んでついには激突する旅客機というのは、実は私の夢の定番だったりする。ほこりっぽい田舎町の光景ともども最もノスタルジーを刺激された。
第五夜:はっきり現代劇なのはこれだけかな。その意味ではこれも脚色の極北。市川実日子がはだか馬を駆りながら「…ちくしょ〜」と憎々しげにいうカットがかっこよくて痺れた。これの監督(豊島圭介)は知らないけど売れそうな画面づくりの感性を持ってる。
第六夜:松尾スズキによる2ちゃん語を駆使した運慶讃。「萌え〜っ!!!(Moe--!!)」ここまで率直かつ的確に2ちゃんねるの空気を再現した作品はなかったのではなかろうか。英語字幕を終始付けるアイデアも秀逸。オチに石原良純をもってくる意味不明さも爆笑もの。
第七夜:これのみアニメ(3DCG)。天野喜孝のキャラが動いてるの久しぶりにみた。ファイナルファンタジーに出てくるようなスカした盗賊みたいな主人公がへタレなのがミスマッチでおもしれい。オチはモヤモヤしてるけど、映像美で見せようという意図が最も明確な一篇といえるかも。出来はやや中途半端な印象だが。
第八夜:散漫というか繋がらない筋運びが夢らしいともいえるけどちょっと見ていてタルかった。巨大ミミズみたいな生物を孫が拾ってきて母親に叱られている場面でとりなすように舌を鳴らしてなでたりする祖父役の藤岡弘の出オチ篇、かな。
第九夜:これもやや散漫だなー。とりあえず緒川たまきの若妻姿と神社に繋がれて泣く息子がかわいい。
第十夜:これはたしかに最後に持ってくるしかないという凄まじい画太郎ワールド。デブス上等、放屁ヒップアタックあり、美女(本上まなみ)のセルフ豚鼻あり。絶対に食事中は見ないでくださいとクレジット出すべき。しかしL役に続いて、松山ケンイチはなぜこんなにも漫画界と親和性が高いのか… ちなみに一番個人的にウけたのは「○ャー○ーとチョコレート工場」のチョコ川のパロとしか思えない豚丼工場めぐりのセット。