2021年12月に観た映画まとめ

ラストナイト・イン・ソーホー ('21 イギリス/監督:エドガー・ライト)

ネオンの夜に閃く未知への期待とやがての悪夢。若さに待ち受けるのは常に罠なのか。時代を超えてつながるものは果たしてそこに在るのか? B級ホラーのチープさとストイックに絞られた時代批評とがツイストダンスを踊る。何か土台たる脚本がガタガタなような気もしないでもなくそんなことはないでもないが、意表を突くどんでん返しまであったんだからまあいいや。60年代のヒットナンバーは最高に響くし、かつての少女として結構力づけられるところもあった。ところでこの監督は過去作『ベイビー・ドライバー』といい、“侮られる者の哀しみ”を描くのがとても上手い。

 

草の響き ('21 監督:斎藤久志)

つまづいてとっさに受け身を取った顔のすぐそばに野草がそよいでいるという情景を子供の頃に何度か見た気がする。遠くを過ぎ去る自動車のタイヤの軋みと近くを駆け回る児童の嬌声、そして目の前の草のそよぎ擦れあう音。すべてが等価ではないかと疑問が起こった。そして無意識にすぐ打ち消した。世の中には気付かない方がいいものがあると何となく分かっていたのだ。最後の主人公の表情が忘れられない。そこにあったのは確かに人間が生来に持つ危うさなのだが、世界に対して無限に繋がることのできる豊かさもまた同じ場所から始まっているのだ。妻も夫も本当にお互いを愛していた。