現存する各地の遊廓建造物を写真で紹介したもの。色タイルとステンドグラスの多用が印象に残る。売春資本が公的認可され、やがてかつての苦界としての姿が溶解していく歴史を解説した著者自身のコラムが勉強になった。それにしても、昭和中期まで稼働していた施設が多いせいか、意外と陰鬱ではなくてむしろポップさが入った内装なんだなと感じた。
月岡芳年 月百姿
数十年イチオシの浮世絵師である芳年だが、遺作となったこの続きものを通して鑑賞したのは初めて。あらためてこのレベルの発想と構図とを百枚描き通したのは凄い筆力と気力だと思う。それにしても荒事だけではなく、忠義や仁性をほのめかすのみの趣向の多さには、昔の日本人の教養の高さを感じた。