薄曇りながら非常に穏やかな天気。風がほとんどないため自転車を漕いでいても空気抵抗をまったく感じず、いつもより会社に早めに着いた。そしてキンモクセイの香りがほのかに始まっているのを感じる。いつもながら花の姿は確認できないが。

 仕事をさて始めようとして、機械の部品がないことに気付き、上司を呼び寄せてひと悶着。その数時間後に、席をほんの少し外している間に部品が戻っていることに気付き、キツネにつままれたような心持ちで、自分の正気をやや疑ったが、その感触が読書中のフィリップ・K・ディックのインタビュー集の一節にそっくりだったのだ。ある夜、住んでいた貸家に何者かが侵入し、部屋を荒らされているのを発見したディックは(よかった、自分は狂っていなかった!)と妙な安堵を覚えるのだが、それは事前に不審な人物の存在を感知していたためだった。そして自分の場合は、たしかに部品が消えていたことを上司に確認を取ることにより、認知の歪みによる思い込みではなかったことに安心した。さらにディックは同じ本の中で、世界には偶然の一致などなく、すべての相似には意味がある、すなわちシンクロニシティの重要さを説いている。何かそれなりに感じ入った次第だ。