ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

第二次世界大戦において枢軸側が勝利したという設定で、日本合衆国に組み込まれたアメリカ大陸を舞台に、サイバーパンクとロボット戦とヤクザの暗闘とが入り混じるカオスの世界が描かれる。色んな要素が入っているわけだが、自分はこれを優れてハードボイルドな無常観の文学として読んだ。あらゆる混濁を受け入れて、自分の信念や執念にこだわる主役男女ふたりの生き様は、愚かで悲しみはあるが、だからこそ共感する。また、イデオロギーから自由に解き放たれて歴史のifを辿る筆致からは、母国やかつての敵国、様々な視点から物事を眺める事の可能性が感じられた。一見おもちゃ箱のような荒唐無稽さだが、SF小説としての一本通った筋が確実にある作品。