恋人たち('15/監督:橋口亮輔)

新婚の妻を無差別殺人で亡くした建造物調査員、夫や姑との家庭とパート勤務先との往復に閉塞した主婦、有力事務所に勤務して弁護士活動をこなしながら同性愛者として思い悩むキャリア青年。三者の恋情の軌跡が交互に綴られる。それらは独立して交わることがないだけに、かえって苦悩と鬱屈の普遍性へと自然に思いは至る。あらゆる恋は最後には幻想の確認で終わる。しかしその感情のエネルギーによって目の前に開けてくる青空も、同じ地平にかならずある。そこまで感情を回収してくれる、ベタつかない共感の視点を感じた。個別のシークエンスでは、理解されない孤独、形がないだけにユーモラスに転換されやすい不満、秘しているゆえに純粋さが高まる想い(相手と二人の空間で、その影を松葉杖でなぞるシーンの切なさが忘れられない)がそれぞれ際立っていた。