美形サイコパスの槙島が自ら犯罪の現場で活動するまでは、文句なく楽しめたのだけれど、彼の凶行により朱が精神面で変貌してからは、狡噛と槙島、その観察者としての朱という関係性が形をうしなってシリーズ構成上の弱さを感じた。狡噛と朱、語りの視点をもっとどちらかにはっきりと決めておくか、あるいは槙島が自分と似た者として目をつけたのはむしろ朱の方だった、と展開させることで、三者関係の緊張感を高めればさらに物語の密度は濃くなったかもしれない。舞台立てやガジェット、世界観は非常に興味深いものになっていただけに、それらがシナリオや演出上で咀嚼されきっていない結果に終始したのは、勿体無く思う。ともあれ、社会批評性を持つ志の高い作品が二クールも放映された事には素直に感謝したい。
