「よんでますよ、アザゼルさん。Z」第3話『痔のカリスマ』

ギャグ作品におけるテンポの良し悪しは、ネタの中心モチーフが支配する世界観にどれだけ滑らかに推移するかに掛かっている。この回を視ていてそう感じた。
エピソードの発端は堂珍少年がある日とつぜんに自分が痔を患っていると気付きトイレで絶叫するというもの。彼はその現実をなかなか受け入れられずに最初に行った病院で紹介された専門医の診察を無下に断ったりしている。…しかしその理由は他にもあり、ギャグものの定番であるホモセクシャル絡みのネタを適度に絡めてくることで、堂珍の日常が序々に侵食されていき、彼の価値観の重点も自ずとズレていくことが暗示される。そこまでが前半戦。
後半に入るとゲストキャラである丸米が堂珍と同室に入院してくる。彼が語る痔にまつわるトラウマは、戦争の悲劇かと思いきや実は関係がなく、人間全般への失望かと思えつつも彼自身の粗忽さも派生譚(彼がチラシのうたい文句から外れたデリヘル嬢を結局は部屋に入れているさりげない演出が光る)からは窺える。適度に混濁化した価値基準の支配する院内で、ラストシーンにおいて堂珍の行動を制限するのは痔の爆裂。痔とは平時における戦争なのか? 答えの出ない回答を視聴者は胸にしたまま後編を待つこととなる。
なお、(痔)血を近年のアニメではよくある茶色がかった色合いにせずに透過光の付いた鮮やかな赤としたのは二つの意味で優れた采配だった。