2024年10月に観た映画

シビル・ウォー
大統領側がポピュリズム独裁サイドとして描かれていると途中まで気付かず、いやもっというなら最後の最後まで彼が民主主義最後の砦なのか、混乱のトリガーとなった哀れな道化役なのか判別が付かなかった。いずれにせよラストシーンの決定的瞬間ショットは、現実の独裁者処刑写真を思い出させてなんともいえない後味を残す。私たちはもうしばらくは正義をうたった映画を娯楽として気持ちよく消費することはできないのかもしれない。そんな最前線を見事に描き出したポリティクス映画であり、そして繊細に構図と音響とを計算されたアクションエンタテインメントでもある。その手法上の二律背反もまたスマート。

憐れみの三章
エマ・ワトソンは女優として前人未到の領域に達しようとしているのではなかろうか。なんだあのダンス(今年二度目) …おそらくは聖書の解釈を下敷きとして観る前提としてつくられており、スノッブでありながら挑戦的というランティモス節も絶好調。あらゆるカットがエレガントで、これを貸し切り状態の平日午前に観た自分はあの時ことし一番満たされていたかもしれないな。