「絶園のテンペスト」第9話『彼氏』

ストーリーの進行上、間に一話分置いているものの、実質上の第7話への対であり解となるエピソード。葉風以上の(種類のまったく異なる意味での)"魔法使い"であったかもしれない愛花の真価がいかんなく発揮され、そこで起こるエントロピー崩壊のもとで、吉野が「物語の主人公」として開眼する展開が静かなカタルシスを生む、その流れるような構成がすばらしい。愛花は魔法をかけると同時にそれを解除するキーワードを吉野に向けてヒントとして放っていた。それが『テンペスト』。悲劇としてはじまり喜劇として進行した(うん?じゃ左門ぐにゃあ劇場もつまり、制作者の手の内ってことじゃないのか、これ?!)のちに大団円を迎えるシェイクスピア最後の戯曲。不可思議な空気でもってぼやかされていたシリーズの進む方向がここにきて霧が晴れるように見えてきた。吉野が空気の精エアリエル(彼はやはりプロスペローのしもべの内でもこちらだろう)のままで終わるか、内側に眠っていた主体性を十全に発揮して大魔法使いプロスペローないしは王子ファーディナンドへと脱皮できるかが、今後の物語の軸となる。