テンペスト

テンペスト 新装版

テンペスト 新装版

ヴィクトリア朝の香りを残す典雅な作風の挿絵画家エドマンド・デュラックのイラストとともに読むシェイクスピア晩期の戯曲。展開に暗さこそないものの、復讐者である老人の視点が主格になっているせいかうっすらとした締念が全体を覆う。と同時に浮世離れした空気の世界観が、どうにも今生と縁が薄いように思われて、栄華を極めたシェイクスピアにも、老いてからは思うところあったかなとふと考えてしまったりする。魔法の書を深海に投げ捨てる老魔法使いプロスペローが示したように、あらゆる時代は終わりを告げる。そこに何をみるかは当然読む者に委ねられる領域なのだろうけど。