邪悪なものの鎮め方

邪悪なものの鎮め方 (木星叢書)

邪悪なものの鎮め方 (木星叢書)

ブログで発表された記事の中からセレクトされたエッセイ集。編集仕事がなかなか素晴らしく、寄せ集め感は薄い。たとえば学生運動に関わっていたころに内ゲバにより友人がふたりも亡くなっているという述懐のある記事を最初の章に置き、内田氏の通常は表に出ない立脚点を明らかにしたのちに最後の章では社会批評性のよりストレートな文章を充てるという読み手に対する配慮が感じられる。コンパクトな中に、氏の本質性が見えやすいという意味でたつるビギナーにもおすすめできる内容ではなかろうか。なお「父権性イデオロギー」からそろそろ脱却して「ローカルな共生組織」に精神を満たされることから始めようという提言には、自分の生き方というマクロのみならず、アニメの観賞方法というミクロにまで応用できるようで、記事そのものの柔軟性に特に深く感じ入った。