目的も素性も明らかにされない日本女性がドイツの一地方にある女子
修道院を訪ねるという筋書き。そこでは少し前に院長が外部から追ってきた男性と夜逃げ同然に出奔したという出来事があり、それが
修道院全体の空気を覆っているようではあるが、その謎解きがこの小説の主題ではない(が、詳細は一人称の持ち主が移った第二部において描かれる)。石の文化と木の文化、言い切るような印象のドイツ語とあいまいさの残響が後をひく日本語。それらの合間を縫い合わせる針のような思考運動そのものに意味が置かれている。とはいえ、近著に目立つようになった
セクシュアリティは今回においてもアクセントとして効いているのだが。